【5-1-1】羽黒川の問題

羽黒川川づくりに対する意見書

2004年6月14日
山形県置賜総合支庁河川砂防課 課長 様
羽黒川川づくりに対する意見書                    
     
ネイチャーフロント米沢
代 表  青 柳 和 良

「ネイチャーフロント米沢」は結成間もない団体ですが、ここに加わっている個人の何人かは「羽黒川川づくり」が検討され始めた頃からこの川の実態に関心を抱き、観察をしておりました。
今年2月の羽黒川フォーラムにも積極的に参加しております。
そして、「羽黒川川づくり」の方針に対して、会員が抱いた疑問や意見を会の中で討議した結果、重要なものが多いことを確認できました。
私たちは、ここにその代表的なものを取りまとめ、置賜総合支庁河川砂防課に提出することにいたしました。
担当の皆様ご多忙のところを恐縮ですが、本文書の末尾にまとめた質問に対しては可能な限り文書でご回答いただきたく、また意見・要望に対してはそれらをどのように受け止め、または対処していただけるものか、文書または口頭でお聞かせいただきたく、お願い申しあげます。

1.「川づくりの全体方針」に対する意見

本年2月に開催された羽黒川フォーラムの資料によると、「羽黒川川づくり」に対
して置賜総合支庁河川砂防課から3つの方針が示されています。すなわち、
(1)洪水に対して安全な河川整備
(2)河畔林等の自然の保全、現在ある生態系の維持、保全。
(3)地域住民が豊かな生態系に触れ河川を心地よく利用できるような親水整備。
以上の3項目に対する意見を順次記述します。

なお、関連質問は大小数多くあるため、本文最後にまとめましたのでよろしくお願いします。

(1) について
 洪水対策は必要ですが、100%完全な対策はあり得ません。どこまでの安全を見込むかという問題になります。
今回の場合、羽黒川の計画高水量とその根拠が明らかでなく、計画高水量と行う事業の関連も明らかでありません。
河川改修はどのように配慮しようとも現在の自然を改変することになるわけですし、無駄な公共事業を行なわないという観点からも、緻密に具体的に検討した上で、必要最小限度の改変にとどめるべきです。
特に河道工事は、魚類や植物に大きなダメージを与えるので、細心の注意が必要です。

(2)について
 河畔林・河川生態系の維持、保全を3本柱の一つにしたことはとても大事なことです。
過去の河川工事から見れば大きな進歩といえます。
ですが、河川工事に直接関わる方々(行政の担当者、業者、検討委員、地域住民、など)のなかに、河川生態系に理解を持っておられる方がどれだけおられるのでしょうか。
 具体的には、羽黒川の今の河川生態系について、その特徴などを把握しているかということです。
昨年、私(青柳)も植物と鳥の調査に同行しましたが、これは自然をちょっと覗いただけであり、多面的な生態系の全体像はほとんど未解明のままです。
それでも他河川に比べて比較的良好な自然が残されていることは垣間見ることができました。
(幾つかの特徴的な側面を確認できましたが、ここでは省略します)
 問題は、その河川生態系をなぜ今保全しなければならないかということと、そのために人為的な圧力(河川の改変や利用)をどこまでは許せる(どこまでは許せない) 
かということです。
 保全しなければならない理由としては、私たちは次のように考えます。すなわち、
 最上川が上流から下流まで防災や利用などさまざまな目的で大きく改変され河川生態系が各所で崩壊しつつあるなかで、最上川最上流部にある羽黒川は米沢市域で唯一良好な自然が残っているところだからです。
多様な自然環境および種多様性を維持する立場から考えるなら、現在ある羽黒川の自然は大変貴重なものといえます。
 人為的な圧力(河川の改変や利用)をどこまで容認するか、という問題では次のように考えます。
まず、災害防止のための必要最小限度の工事は容認せざるを得ないでしょう。
それとても、一部植生破壊や流路・川原地形の変更に伴う哺乳類、鳥類、魚類、昆虫類、その他多くの動物への影響も避けられないわけで、十分慎重を期さなければなりません。
しかしそれ以外の各種グラウンド、駐車場、花壇、散策道、休息場、飛び石、等々は、本来の河川生態系には無縁のものであり、それらは必要最小限度に止めるべきです。
これらの施設が多く作られ便利になるほど、それを利用する人達の圧力が日常的に生態系を圧迫することとなるからです。
人々が自然度の高い川に触れることは大いに結構ですが、それが川の自然度を低下させ、回復不能なダメージを与えるものであってはなりません。
羽黒川を第2の松川にするべきでありません。
しかるに羽黒川の整備イメージを見ますと、とても生態系の維持・保全を配慮したものとは思えません。
昔ながらの土木工事による護岸整備と施設整備です。
 「川づくりの全体方針」の②にある生態系を維持・保全するということは、そういう人為による圧力を極力少なくすることであることをご理解いただきたいと思います。
 なお、羽黒川の河川敷は自然が比較的良好な状態で残っているとはいえ、これまでの流域沿線の利用、上流下流の工事、その他により、かなり自然が撹乱されていることが植生に明瞭に表れています。
これ以上のストレスの増大は、生態系の崩壊につながりかねないということに特に注意を喚起しておきます。

(3)について
基本的な考え方は②に記述しましたが、特別の施設は不要である、というより作べきでありません。
裸地や荒地の緑化、水辺に到達するための最小限度の歩道程度にとどめるべきではないでしょうか。
また、その歩道の規格などについては後述します。
 住民が豊かな自然に触れるためには、極力人工物は作らないほうが良いし、たとえば川で芋煮会等を催す場合も自然石を利用し、事後はすぐに原状に復帰できるものであって欲しいものです。
 川との触れあいや「親水」についてはすでに「整備」されている松川があるのですから、松川と同じものをつくる必要はないと思います。
 その他個々の課題については以下の 2.具体的な要望  に述べます。

2.具体的な要望
  その1.施設や環境改変等について
(1)護岸工事について
 方針にも示されていますが、石積や蛇籠工法を原則とし、植物の生育を促すことで護岸の強度を増し、水中では魚類などの生息環境を豊かに作り出すよう配慮してください。

(2)散策道について
 基本的には散策道は不要であると考えます。昔は河川がもっと生活に密着していたため、人々が必要に応じて踏み込むことで自然に道ができていたはずです。
もし散策道を作るとしてもその程度のものとすべきではないでしょうか。
 そこで次のように提案致します。
 a.堤防沿いの道から水辺に至る最短の道を数ヵ所に設ける
 b.鳥や小動物の生活、繁殖の場となっている砂礫地、ヨシ原、河畔林の中に網目状に散策道を設けることは避ける。
(砂礫地は、コチドリ(チドリ科)やコアジサシ(カモメ科)の、ヨシ原はオオヨシキリ、ヨシゴイ、ヒクイナなど湿地に棲む野鳥たちの繁殖地である。
~以上コチドリ以外、県の絶滅危惧種~)
 c.道幅は100~120㎝程度とする。(ある軽自動車の車幅が約139cm。車が入り込まないためにもこの程度の道幅でよいと考えます。)
 d.散策道は舗装しない様にしてください。(チップをまくなどする。)
 e.各所に車止めを設け、河川敷への自動車の進入を抑止する。
 f.休息場は設けない。

(3)花壇
 河川生態系に花壇は不要です。花壇の魅力で人々を引きつけても、それは花の公園と変わらないわけで、「豊かな自然」に目を向けたことになりません。
園芸植物が自然植生の中に持ち込まれることにも反対です。
 花壇に費やする経費と労力があるのなら、河川敷の樹木や草本に名札を多数つけることのほうが、はるかに市民に喜ばれ、自然学習にも役立つと考えます。

(4)駐車場
 羽黒川の自然に触れようとして訪れる人々のための駐車場は、小規模のものを3~4箇所設ける程度で良いと思います。
現に利用され裸地化しているところを原則とし、既存の植生などを壊さないよう配慮してください。

(5)工事時期
 野鳥の繁殖期に相当する4月下旬~7月上旬には実施しないで下さい。
(散策道に限れば3月下旬~8月上旬の工事を避けて頂けるとありがたい。)

(6)河畔林について(野鳥の見地から)
 野鳥たちのねぐらや営巣場所、あるいは、冬季に飛来する猛禽類(オオタカ・オジロワシ~以上2種、県の絶滅危惧種~など)がハンティングするための止まり木や体を隠すための樹木(河畔林)がどうしても必要です。
そのためにも樹木(河畔林)の伐採は最小限に止めていただきたい。
  
3.具体的な要望

  その2.各区間ごとの要望

(1)四ヶ村堰~羽黒川橋
 a.現にある児童運動場やゲートボール場以外の荒地などには、最小限度の駐車場はやむを得ないにしても、残り大部分に自然緑地を復活させるべきです。
児童運動場と羽黒川橋の間に自然緑地が大きく欠落することは、上流と下流の生態系を分断することであり、「川づくりの全体方針」の②に反することと考えます。
 b.児童運動場の植樹による緑陰創出は、この河川に生育する樹種を選び、名札などをつけて自然学習に役立てて下さい。
桜とかハナミズキとか、外来種はもちろんのこと、ここの植生になじまないものは厳しく避けていただきたい。
 c.花壇は不要です。もし地域住民の要望が強く花壇作りに代わる活動を導入する場合は、前述の様に、羽黒川河川敷にある樹木や草本に名札をつけ、市民の自然学習に役立つような活動を希望します。
特に草本は四季を通じて変化するので、花壇の手入れに近い頻度で観察し、名札の付け替え等の手入れが必要になります。
 園芸用草花の持ちこみは厳しく避けるべきです。これも「川づくりの全体方針」の②から導かれる当然の結論といえます。

(2)羽黒川橋~八幡原大橋
 d.散策道が多すぎます。特に羽黒川橋に近い河畔林を横切る形の散策道が多すぎて網目状になっていますが、横切るものは1本あれば十分でしょう。
また、流れに平行する散策道がごく近接して何本もあり、整理すべきです。
水辺の散策道は要らないのではないでしょうか。
これほど密度の高い散策道は、鳥獣への大きな影響が避けられません。
公園を作るのではないということを心すべきです。
 e.休息場は不要。自然石や砂の上で休息は取れます。
 f.区間中間部の現砕石置場は面積が広大なので、最小限度の駐車場はやむを得ないとしても、残り大部分に自然緑地を復活させるべきです。
花壇は不要。上記c.と同じ配慮を求めます。

(3)八幡原大橋~万世橋
 g.八幡原大橋に近いところで、流れに平行する散策道が4本も計画されているところがありますが、多すぎます。
特に緑地を縦断する歩道は避けるべきです。
水辺の散策道も藪があれば刈り払う程度にして、道としては作らないほうが良いと考えます。
 h.休息場についてはe.と同じ。

(4)万世橋~山神堂橋
 i.河畔林の伐採が避けられないのであれば、せめて高木を点状に残し、草本や低木を中心とした自然緑地とともに上流部と下流部の生態系の連続性を保持していただきたい。
 j.同じく、少なくない場所で高木や低木が川面に張り出すような環境を作っていただきたい。
鳥や魚の生息環境として大切なことと考えます。
 k.イメージ図のような整然とした河道整備が行われれば、「多自然型の河川整備」に反するし、自然豊かな羽黒川の傷として永久に残ることになりかねません。
草本や低木が河川敷や護岸を覆うことが可能な工法(先述)を希望します。
 l.イメージ図では、一部を芝生にするようにも見えますが、それは避けて、たとえ草本や低木であっても自然植生に覆われた河川敷となるようにしてください。

4.その他の要望
 羽黒川の工事に入る前に、羽黒川フォーラムで出された意見や私達を含む一般市民から寄せられた意見がどの様に反映され、どんな工事になる予定なのかお聞きしたいので、2月に行われた「羽黒川フォーラム」の様なものを開いて下さる様お願い致します。

5.質問事項
 質問は多岐にわたります。そしてかなり個人的な関心にも左右されます。
それ故、質問相互に関連するものもあると思いますが、敢えて整理せずにそのまま羅列いたしました。
ご理解ある対応をお願い致します。

 (1)羽黒川の計画高水量とその根拠、今回の事業との関連についてお示しください。
 (2)過去10年間の洪水記録、および過去最大規模の洪水記録を、その被害状況とともにお示しください。
 (3)この工事に掛かる総事業費をお教えください。
 (4)河畔林の伐採を要所要所で行う予定がありますが、それぞれの箇所の伐採する植物・樹木の種類を教えてください。
 (5)伐採した後の樹木はどの様に扱われるのでしょうか?
 (6)羽黒川はあばれ川とのことですが、何故今まで抜本的な工事が行われず、今、行われるのでしょうか。
 (7)この工事により洪水がどの位防げるのか、シュミレーションしたデータを教えてください。
 (8)羽黒川上流に、水窪ダムがありますが、これを有効に利用することによって洪水を防ぐことはできないのでしょうか?
これにより、工事の規模を縮小し、事業費の削減、できるだけ多くの自然の維持につながると思います。
(水窪ダムは、刈安川水系のダムではありますが、羽黒川にも関連したダムと聞き及んでおります。)
 (9)羽黒川は、具体的にどんな時にどんな箇所が洪水を起こすのでしょうか?
 (10)散策道に車止めを設けると聞き及んでおりますが、どんな車止めになるのでしょうか?
 (11)羽黒川沿いに、散策道を造られる様ですが、散策道を造って欲しいという具体的な要望があったのでしょうか?
 (12)山神堂橋下流は、整備イメージからすると、芝生を植える様ですがどんな種類の芝生を植える予定でしょうか?
 (13)万世橋~八幡原大橋~羽黒川橋に散策道ですが、八幡原大橋と羽黒川橋の橋の下にも散策道が出来るのでしょうか?その場合、下に橋を架けるのでしょうか?
 (14)八幡原大橋すぐ下流の堰ですが、魚道ができるとのこと。大変よいことだと思います。どの様な魚道が計画されているのでしょうか?
 (15)高水敷利用の意味を教えて下さい。
 (16)八幡原大橋~羽黒川橋の間に高水敷利用の箇所は、駐車場をつくる計画の様ですが、舗装されるのでしょうか?(舗装はしない様にお願い致します。)
 (17)万世橋~八幡原大橋~羽黒川大橋の左岸側の散策道ですが、予定の道をたどって行くと、とある会社の建物にぶつかったりします。
こういった建物はどいてもらって散策道にするのでしょうか?それとも、そこを避けて散策道にするのでしょうか?
 (18)八幡原大橋すぐ上流には河畔まで車で入っていける道が出来上がっています。
   この道は散策道の予定の中に入っていない様ですが、そのまま何もしないのでしょうか?
(こういった所には車止めは設けないのでしょうか?)
 (19)八幡原大橋下流等、既に河畔に降りていける道がいくつかあります。道幅も車が十分に入っていける広さが出来上がっていますが、これらにも1つ1つ車止めが付けられるのでしょうか?
 (20)工事開始の予定時期をお教えください。
 (21)河川砂防課の考えていらっしゃる「豊かな自然」とは何でしょう?また「豊かな自然を守る」とはどんなことと考えていらっしゃいますか?
以上