【8-1-1】その他飯粮集(米沢藩の救荒書・天明三年)
天明三年御評定
飯粮集 わらび蕨気味甘寒無毒 くきをとり、あく水にてゆで、水にさわし、あくきをさり、きざみ、粮にもちゆ。又ほしてかこふべし。世人ひさしくもちゆれば、あたるいふ事あり。無差合。 わらびもち わらびの根を取り、うすにてつきくだき、しろき水をいせてほしかわかし、こにして、山牛坊(蒡)・むき粉・そばこ・米のこの類をまじへ、餅となして用ゆ。 ぜんまい紫?気味甘温無毒 もちひかたわらびのごとし。おみなへし・はますけとあわせくろふべからず。 すいかずら忍冬 気味甘温無毒 わかはをとり、あく水にて能ゆでさわし、きざみ、こまかにして、粮に用ゆ。又、きりあひにして用ゆ。さしあひなし。 うるい王?花気味甘辛寒有毒 小きぼうしとも云。山沢に有るをかてに用ゆ。やわらかなるを取り、ゆで、水にさわし、きざみ粮とす。ほしても用ゆをなおよしとす。古人おほくもちゆ。無差合。 くわんさう萱草気味甘冷無毒 はをとり、ゆでて、水にさわし、かてにもちゆ。差合なけれども、ながく用ゆれは、あたるといふ事有り。 ととき杏葉沙参 又 ?? 気味苦寒無毒 はをとり、ゆでて水にさわし、かてに用ゆ。ねも又ほして用ゆ。さしあひなし。 ききやう桔梗気味辛温有小毒 もちへかた、ねはともにまへにおなじ。無差合 あさみ苦?気味?苦寒無毒 やまにも、さとにもある草なり。とき(とげ?)のあるを山薊(オニアザミ)といふ。用ゆべからず。ときのなきをもちゆ。はをとり、能ゆで、水にさわし粮にもちゆ。ときあるものは、くわいにんの女喰ふべからず。ときなきをよしといへども、もちゆべからず。世俗あさみとあつきをあわせ食すればあたるといゑり。 たひらこ 黄凡菜 気味?苦寒無毒 春はたけに有る草。ほとけのざともいふなり。ゆでさわし、かてに用ゆ。さしあいなし。 ふき ?冬 気味花苦辛温?甘 ?苦温無毒 やまふき、みつふき、いつれもくきはともにこぬかにてゆてさわしもちゆ。ほしても用ゆ。さひかちのめをいむ。 くじな 蒲公英 気味苦寒無毒 よくゆてて用ゆ。さしあひなし。 はたけな 菘 気味甘冷有小毒 かぶら 蕪? 気味辛甘苦無毒 たいこん 菜? 気味辛甘?温無毒 しやせんそう 車前草 気味甘寒無毒 右四品、根葉ともにゆて、用ゆ。又ほしてよろし。さしあひなし。 あつきのは 赤小豆 気味甘冷無毒 まめのは 大豆 気味甘温無毒 ささけのは 紅豆 気味甘鹹無毒 なすのは 茄子 気味甘寒無毒 此四品、葉を取りこまかにきざみ、ゆてて水にさわし、粮に用ゆ。小豆は、うをのすしをいみ、大豆はいのししいみ、もやしは、ほんたわらをいむ。ささけは、さしあひなし。 やまごぼう 商陸 気味辛平有無毒 はなしろく、ねしろきものはをとり、あく水にてよくゆで、たびたび水をかひ三夜水にひたし、うすにてつき、むぎ・こめのこるいをいれ用ゆ。無差合。 くつのは 葛 気味甘平無毒 はをとり、あく水にてゆで、水にさわしこまかにきざみ、かてに用ゆ。差合なし。ねはわらびのこのごとくにして用ゆ。 からすふりのは 括? 気味苦寒無毒 はをきざみ、あく水にてゆでさわし、かてに用ゆ。ねをわらびのこのごとくにして、てんくわふんといふ。だんごもちにしてよろし。 がばのつの 蒲筆 一名蒲筍 気味甘平無毒 がばともいふ よしのつの 蘆筆 気味甘寒無毒 ちがやのめ 茅 一?白茅 気味甘寒無毒 此の三品、あく水にてゆで、水にさわし、かてとす。いつれも差合なし。 つはな 茅針 気味甘平無毒 ねをとり、よくゆでさわし、かてとす。差合なし。 よめな ?蒿 気味無毒 はもねもよくゆでて用ゆ。くわいたいの女くろふべからず。 いたとり ?杖 気味苦温無毒 わかはをとり、よくゆで、水にさわし用ゆ。くわいたいの女食すべからず。 おみなめし 敗醤 気味苦平無毒 はをとりよくゆでさわし用ゆ。無差合。 うはのち 夏枯草 気味苦辛寒無毒 うつぼぐさとも云。はをとりよくゆで用ゆ。 ふじのは 紫藤 気味甘温有小 常(?)のふじの葉をとり、あく水にてゆでて用ゆ。さしあひなし。 あめふりはな ??花 気味甘温無毒 ひるかほとも云。葉をとりあく水にてゆでさわし用ゆ。ねもおなじ。差合なし。 せきしやう 菖蒲 気味辛温無毒 あく水にてよくゆでさわし用ゆ。あめをいむ。 なるこゆり 黄精 気味甘寒無毒 あまところ 萎? 気味甘平無毒 よくゆでよくさわし用ゆ。むめいむ。 きしきし 羊蹄 気味苦寒無毒 一?辛苦有小毒 はをとり、いくたびもゆでいくたびもさわし、すみをさり、きざみ用ゆ。差合なし。 おけら ? 気味甘温無毒 幾度もゆで、幾度もさわしうすくきり用ゆ。かぶら・すずめ・さばをいむ。 はひやう ? 気味甘冷無毒 すべりひゆ 馬?? 気味酸寒無毒 すめりひやうとも云。此の二品、能ゆでよくさわし用ゆ。しほを入てほせば葉おちず。くわひにんの女喰ふべからず。 ぶどうのは 葡萄 気味甘酸温無毒 はをとり、能ゆでよくさわし、こまかにきざみ用ゆ。さしあひなし。 すきな ??? 気味淡甘?苦無毒 やわらかなるときとりて、よくよくゆでて水にさわし用ゆ。さしあひなし。 つくし 筆頭菜 気味同前 ゆでさわし用ゆ。なにのさしあひなし。 はす 蓮 気味甘温無毒 葉も根もよくゆでさわしかてとす。差合なし。 ところ 草? 気味苦平無毒 ね、いものごとくなるをとり、よくゆでさわし、にがみをさり用ゆ。さしあひなし。 はこべ ?? 気味酸温無毒 ゆでさわし用ゆ。くわひにんくろふべからず。 ほと 土芋 気味甘寒有小毒 葉も根も能ゆでさわしもちゆ。又、ほしてかこふもよし。差合なし。 よもき ? 気味苦温無毒 はをとり、あく水にてゆで、水にさわし、むき・こめのこの類をまじへもちにして用ゆ。 とりあし 落新婦 気味甘苦寒無毒 やわらかなるうちにとりて、よくゆでさわし用ゆ。差合なし。 かわほね ??? 気味甘淡無毒 ねをとり、こまかにきざみ、あく水にて幾度もゆでさわし、かてにもちゆ。差合なし。水のうちにいつる草に、大せりのねにまごふ事あり。大せりのねは、はなはだどくあり。まごふべからず。 またたび 木天蓼 気味辛温有小毒 葉やわらか成ときとりて、あく水にてゆでさわしきざみ用ゆ。差合なし。 あかざ ? 気味甘平?毒 はをとり、よく水にさわし用ゆ。又、きりあひにして用ゆ。くわひにんくろふべからず。 かたたこ ?? 気味甘平無毒 うるいのごとくして、小なりはくきをとり、よくゆで水にさわし用ゆ。ほしても用ゆ。ねは、わらびのこのごとくしてかたくりといふだんごとなしてくろふ。さしあひなし。 ちさ 萵苣 気味苦冷?有毒 はをとりゆで用ゆ。くわいにんくろふべからず。 ゆり 百合 気味甘苦冷無毒 やまにも、さとにもあり。いつれのゆりも、よきかてになり、さしあひなし。 はらな 苅萱 気味未計 山にもいつる草なり。かるかやということあり。かるかやは、すすきの類にして、かにかやなり。草のかたち地楡(チユ)。気味苦寒無毒。此の草ににたり、はらなは、このわれもかふなるべし。二品ともに無差合。 かわらしちこ ??? 気味甘平無毒 はみくさといふ。やまのしちこにあらず。はをとり、あく水にてゆで、水にさわしよくつき、むきか米かのこをまじひ、もちとす。さしあひなし。 すいくわ 西瓜 気味甘寒無毒 まくわ ?瓜 気味甘寒有小毒 ゆふかほ 壺? 気味甘冷無毒 かもふり 冬瓜 気味甘寒無毒 ぼうふら 南瓜 気味甘温無毒 たうなす、あほちゃ、このたぐひ、もんじしれず。されども、ほうふらにおなじかるべし。 しろふり 越瓜 気味甘寒無毒 きふり 胡瓜 気味甘?有小毒 へちま 糸瓜 気味甘平無毒 かんひやう 瓢? 気味同壺? いつれも、こまかにきざみゆで、用ゆ。ほしてかこふもよし。いつれも、さしあひなし。 やまいも 薯? 気味甘温無毒 さといも 芋 気味辛平滑有毒性冷 おなしくはくき 気味辛冷滑無毒 つくいも ??薯 気味甘温無毒 むかこ 零?子 気味甘温無毒 此五品よろしき品なり。差合なし。 ねき 葱 気味?辛冷葉温 きしをいむ。 あさつき 胡葱 気味辛温無毒 ののひる 山蒜 気味辛温有小 にら 韮 気味辛温無毒 なまならばゆで用ゆ。又、ほしてかこふ。差合なし。 うしひる 澤蒜 気味辛温有小毒 ねを用ゆ。いたってえこきものなな(?)は六とき程能々にてえこみをさり、さわし用ゆ。差合なし。 みちしは 狼尾? 気味苦平無毒 みちのかたわらにある草。ちからしばと云。みをとりめしにかしき用ゆ。 まこものわかめ ?? 木草日菰気味目寒無毒 ゆでて能つきて用ゆ。みをとりつきてこめのことくにあわなどへまじへ、かゆとなし用ゆ。 ねなしかつら 鬼?子 気味辛甘平無毒 わかは、つるともにとり、よくゆでさわし用ゆ。無差合。 かわらさいこ ?? 気味甘苦無毒 川原に有草。わかはをとり、あく水にてゆでさわしもちゆ。差合なし。 なつな ? 気味甘温無毒 ねはともにゆでて用ゆ。 にんじん ??? 気味甘温無毒 まへにおなし。 ははきき 地? 気味苦寒無毒 はをゆでさわし用ゆ。きりあひにして尚宜。無差合。 うと 独活 気味苦寒無毒 ねもくきもとり、能ゆでさわしもちゆ。無差合。 ぬすびとのあし 赤?天麻 気味辛温無毒 根を取り、塩湯にてゆで、よくさわし用ゆ。又むしても用ゆ。無差合。 ぬか こめのぬかなり。いりこがし、はたき、かうせんのことくにして用ゆ。あたる事なし。 こぬか 則、米のこぬか、是を用ゆればおほくあたるとなり。 そはから そはのからをいりこかし、はたき、かうせんのことくにして用ゆ。あたる事なし。 とうふのから そのままかてに用ゆ。 ふのから しほをまじへ、ふかしてかてに用ゆ。 むくげ 木槿 気味甘平滑無毒 はる、わかはをとり、あく水にてゆでさわし、きざみ用ゆ。差合なし。 とち 二三日ひや水へひたし、なべへ入、あたためさひつちにてひしき、かわをさり、なかれ水へ二三日程つけおき、鍋へ入、煮立あくを入かきまじへ、それよりあくまま菰なとへつつみ、一夜ねせおき、よくよくあらひ、鍋江入、水をたくさんに入あたため、又、水をかえあたためる事七度程、むきいろに成程水をかへ、あたためるときは、にがみのぞき、ことごとく、たへよきものなり。それを、よくよくうすにてつきつふし、もちこめかなにそをつきまじへ、しよくしてよし。無差合。 したみ ?実 気味辛平有小毒 さしあひなく、こしらへかたとちとおなし。 たら ?木 気味辛平有小毒 はひらかざるとき、めをとりよくゆでさわしてくろふ。みそあひにしてなをよく差合なし。 うるし 漆 気味辛温無毒 たらのめのことくもちゆ。 くわ 桑 気味甘?無毒 わかはをとり、よくゆでさわし用ゆ。無差合。みもよきかて也。 さいかち ?? 気味辛温有小毒 たらのめのことくして用ゆ。 きり 桐 気味甘?無毒 はを用ゆ。くわのはことくして。 かうす 楮 気味甘寒無毒 はを用ゆ。まいのことし。 まゆみ 檀 気味辛平無毒 はのもちいかたまいのことし。かわをにれのきのかわともに、こにして用ゆれは、ここ(?)をたち、うへをすくふと。 うつき 楊? 気味苦寒有毒 はを用ゆるなり。 くこ 気味苦?無毒 うこき ? 気味辛温無毒 はを用ゆ也。いつれも差合なし。 はしばみ 榛子 気味甘平無毒 くるみ 胡桃 気味甘温無毒 かやのみ 榧実 気味甘?無毒 このみ 茅栗 気味未計 くり 栗 気味甘鹹無毒 かき 柿 気味甘?無毒 何れも、みをくろふ。かきはかにをいむ。その外差合なし。 ねむのき 合歓 気味甘平無毒 はをゆでさわしもちゆ。 まつかわもち こしらひかた世人しるところなればしるさず。 たにし 田二四? 気味甘大?無毒 みそにて用ゆ。又、しほいりにても用ゆ。差合、からしをいみ、ごまとかににあわせくらひは、あたるといふ事世のことわさにあり。書物にみへぬ事なれとも、つつしみてよし。 かたかい 漢名未詳 世の人用ゆる事ひさし。 いわたら ゆて用ゆ。ほしてもよし。 あひこ 沢に有草。ゆでてかてによし。 みつな 沢に有草。あみつ、あをみつとて、二つあり。かてに用ゆ。木(?本)草の水菜のことなるべし。 さわくきたち かてによし。ほしてもよし。 やちふき 能ゆでさわし、かてにもちゆ。 へびあさ かやな おほく川原なとに有草。かてによろし。 かわらな まひにおなし。 ゑこな やまさわに有草。 いとな まへにおなし。 からすのや たのほとりなとに有草 さるなめし やまの木なり。葉を取りてゆでてきざみかてとす。 とほらな いつれも本草にみへされば、いかなるものかはしりがたし。されと、おほく用へ来るなれば、ゆでさわし、しほをましへ用ゆるときは、よかるべし。 右本草粮にもなるべき品、未試品々なれとも、本草綱目救荒草のたくひにならい差合之ありなしをしるす。 およそつねならざる草のねはを用ゆる時は、??能ゆでさわし、みそしほを以て能にちよくし用ゆべし。みそしほを用ゆる時はあたることなし。粮草にさわる覚あらば、早々みそゆしほゆを呑へし。 うこきのね 常ならざるかてにあたりたるときは、うこきのねを、なまならば五匁程、ほしものならば三匁程、水三盃入せんじ半分につめのむべし。 くろまめ 是も、もろもろのどくをけす。くろまめ一合ならば、水二合、まめ二合水四合入せんじ呑てよし。うをのどくにもよろし。 地醤 つねならざるものたべ、どくにあたる事急成時は日のあたらぬ土を三尺もほりて、其内江水をくみ入、かきたて、にこらかし、しはらくありてうわすみをとり、にむべし。もろもろのどくをけする事と急(?)なり。 右の外、薬用りよふちゆつの事、尤あまたあれと、きうなんのふせきならねは、ゐ(?)らず。 兵粮丸ノ方見聞私記五十七巻ニ出ツ あさのみ、かわをさり、くろまめ、かわをさり、そばのこ 右三品、おなし目合にしてさけにひたし、日にほしつけ、又さけへいれ、つけおき、如斯たびたびして、そののち、くわんやくにして水にて用ゆるときは、うへず。又、ちからもおちずと云。米の食をたべんとする時は、あほいのみをせんじてのむときは、右草?くたる。其内、米の食をたべるなり。如斯せざれば、かつてしよくする事ならぬなり。 又方 くつこ、そはこ 右二品、おなし目合にして、さけにひたしおき、能々ほしつけ、又さけをもつてねりかため、くわんやくとして用ゆ。是は、後(?)はやらすといへとも、ちからおつるゆへに、まへの方にはおよはすとなり。 うへをのそく方 王氏農書ニ出ツ 大豆六升、ゆりあらひ、三へんむしてかわをさり、麻のみ三升、水に一夜ひたし、三へんむして、あさのみのくちをひらくとき、かわをさるべし。二いろ能つきてもちのことくにまるめ、こしきに入て初夜より夜はん迄むして、よるのと?のとき、こしきより取り出し、あすのひるさらし、かわかし、こにするなり。このこを、あくまて、しよくして、一さいのものをくろふべからず。はじめ、一と、あくほどしよくすれば、七日うへず、又七日過て、あくほとしよくすれば、四十九日うへす。又四十九日過てしよくすれば三百日うへず。三百日すきて、しよくすれば二千四百日うへず。いつまでも、かくのことくし、くちかわかは、つねにあさのみのゆをのむべし。若、つねのことくしよくせんとおもはば、あほひのみ三合をこにして、ゆにせんじ、さましてのむべし。みきの草、こかねのいろのこときたいへんくたるなり。其後は、常の食をすすみて、少もがいをなし、此方をもちゆれば、みつよくかほのいろよく、つかれをとろふ事もなきなり。 なままめときはちすのはをひとつにくらひ、少もなまくさくなふして、よくしよくする事なるなり。まい日、二三合ツツかくのことくすれば、百日をわたるべし。 ぬかみその方 こぬか 一石 まめ 二升、又は一升 塩 二斗又は一斗六升 まめをかまにて、しやうゆまめ程に、にて、其かまへ、ぬかを水てしめし合せ入、まめのしるて、むしてとくとよくむしたるとき、ひをやめ、よくつき、塩・大豆・ぬかをむらなくつき合せ、桶江おさめをき、三十日程すきて、また、つき合せ、納置き、程へて用ゆるなり。ひさしくおく程よし。?の水にて拵は、ひさしくおきて、そんせず。しよくをしよりし、ほかへとくこふりをのそき、ふつきの人ときとき、これをもちひてよろしきなりと。 ひたみその方 まめ 一升 しほ三升 常、みそのことくこしらひ用ゆるなり。ひたしなのへんにては、つねつね用ゆる味噌なり。 まめみその方 まめ一升、能煮しゆくし、臼にてつき、とろのことくにし、たまとなし、日数へて、うへにきいろのいてたるとき、あらひ、うすにてすきすきたき、こまかにし、塩三升を入、水を入、うすにてねり合せ、手を以てすくいあくれば、とろとろする様にして、桶に入おき、日数をへて用ゆれは、いろよく、あしもよしといゑり。上??にて常々用ゆるもいみにて、みあるき、くさみやすきかため、ふたくひここにあらわす。 わらひ いみにてむ事なしといへとも、ひさしく用ゆれは、あしく、三月よりは八月迄、根をくろふ事を忌。 せんまい おみなへし・はますけにあわすべからず。 うるい 少しとくある。あく水にてよくゆで用ゆへし。ほして用ゆるをよしとす。 くわんそう おほく用ゆれはあたる事あり。 あさみ くわいにんいむ。世人小豆とあわすればあたるといゑり。 あつき うをのすしとあわすへからす。 まめ いのししのにくとおなしくしよくすへからす。 まめもやし ほんたわらとあわすへからす。 よめな いたとり すめりひゆ はひやふ はこべ あかさ ちさ くわいにんいむ。 せきしやう あめとあわすべからす。 なるこゆり あまところ むめとあわすへからす。 おけら かぶら、すすめ、さばあわすへからす。 ねき きしと合すへからす。 こぬか 宝暦年中、凶作の内是をたへけるもの、あまねくなやみけれは、心得有へし。 敝帚論 当年凶作に付、貧民は今日の飢渇に逼り跡跡の害に相成候品をも相用候?或は彼是と指合候類不相弁儀可有之哉。又は民間未存知品に相用助に相成候品も可有之哉、兼評判一冊に書記差上候様に被仰付、乍恐、左に書記指上申候。 一 御当領におひて粮に相用候品種々多品にて難極尽事に御座候得共、宝暦五年、凶作の節、山添之者ともあらゆる草木の根葉木枝の類口腹に入れ、柔軟の物にて臭苦の甚だしからさる品或は煮熟し候て臭苦の除き候物は、凡、不喰訓品にても悉く相用さしたる害に相成候事、無之様に承知仕候得者、彼と是と指合候品とてはたしか成事無之様に奉存候。 一 粮に相用候品たとひ平常不喰訓そ相なる品にても米穀さへ相加へ用居候はは、後害にも相成間しき様に存候。又上品なる菜物にても少しも米穀を不相加長く相用候事は御当領の者中々堪かたく後害にも罷成候様に奉存候。 一 平常不喰訓粮に相用候共味噌塩を不絶やうに囲置き常に用ひ居候得は、腹中へあたり候事も無之、後の害にも不相成様に承知仕候、因之そ相味噌にても心懸、仕入候様に為仕度奉候 一 民間備荒録は近年奥州の著述にて救荒の肝要を全く記候書に御座候、御当領之儀は大抵同様の風土に御座候得共、当時悉く所用相応無仕儀に奉存候事右備荒録は先達而其御役筋江御渡に罷成候様に承知仕候に付都而、備荒録に相見へ候分は書記不申候 一 雑食にあたり相煩候者も有之節は追々療治可被仰付之旨奉畏存候、若遠方の者相煩候時之ため予備急の薬剤調合仕差上置申儀にも可有御座哉、御下知次第相心得可申候 一 米粃味噌 大和木草に出 臘月に粃を水に和し堅くこね蒸して醤油の滓と塩とを加へ能搗て窯に納め貯ふ。 一 他月にも粃を水和し毬の大さに丸し窯に入置けば、数日経て麹を生ず、取出し蒸して塩と豆汁などを加へ、搗合せて味噌とし窯に納め用。但し、他月に製するは臘月ほどにあらず、久しく貯かたき故也。 一 淡黄?煮粥法 農政全書に出 菜を洗ひ窯に貯へ沸湯へ麦の粉を入れ撹まぜ、菜にそ々ぎ石を圧とす、塩滲を用ひず、六七日に至而菜黄色になる、味微酸にして即黄?となる、此後、只菜を?汁中に入れ、麦粉をも用ひずして悉?となる、其?を細かに切り米と共に粥に煮て用ゆ、よく飢腹を充塞す、二升の米、三升の用にあたると云、?蕪?の三升に当るべしと云、但し蕪?と菘と一類にて形状気味大に同じく少しく差也、菘は種類多し故に是を用べし、農政全書に云、貧民久しく?類のみを食へは色あしくなる、只菘と蕪?とを久しく食へは色悪しからずと云。 飯粮 草之部 一 とりあし 一 と々き 一 うるい 一 あまな 一 みつな 一 岩たら 一 とほな 一 のこぎりは 一 へびあさ 一 はたな 一 からすのや 一 あひこ 一 ここみ 一 しちこ 一 かわらちや 一 仏のさ 一 沢くたち 一 谷地ふき 一 ゑこな 一 しほて 右二十種品ゆびき熟し用 一 野きく 一 めどはき 右二種嫩葉を取ゆびき熟し苦みを去り用 一 小豆の葉 一 まめの葉 右二種千年にても三ふるひにてとふしうてあげ用 一 川骨(コウホネ) 右さいのめに刻、三米?に浸してその水を去り、又米?水にてうてあけ用 一 ぶどうの葉 右嫩葉をとり灰水にてうて、又さ水にてうてあげ苦味を去り用 一 つたの葉 常の蔦にあらず、四時色変らぬ、葉落ず 右灰水にてうて、又さ水にてうてあけ苦味を去り用 飯粮 木の部 一 ぶな木の葉 右嫩葉をとり灰水てうて細かに刻み、又さ水にてうてあけ用 一 山うつきの葉 一名 ?らなし 又 かさは 右嫩葉をとり千年ても三ふるひてとふし灰水てうて、又さ水てうて揚用 一 さるなめしのは 一 楮の葉 一 ゑんしゆのは 右三種製山うつきに同し 一 まゆみのは 一 青木ば葉 右嫩葉をとり灰水てうて、又さ水てうて、よくよく苦味を去用 食忌 一 凡、草木の根葉木枝臭苦の甚鋪もの、或は、かたく剛き品よろしからず、又嫩苗葉よく候共?ひてこわこわ成候品用ゆべからず。 一 かふれぶす 右形状??に似て茎にかふれあり、是を食へは即死すと云。 一 谷こさす 右形状水ふきに似たり、是を食へは即死すと云。 一 大薊の根 右大毒ありと云。 一 豆 右一味久服すれば病を生と云。 一 米粃 右久しく食へは腫病を生と云、又製よけれはゆ事なしと云。 一 同製法 右布袋へ入、白水をよくよくふり出し用と云、又米のめをふるひにてとふし、獣もののあぶらて?あけ用、関川村、綱木村て?年にも用と云。 保養 一 草木の根葉木枝製し、極て寧に聞合惣じて何品にても能々煮熟し屋?からにして相用ひ候やうに仕度存候。 一 飢につかれ候者は申不及はす、病人並懐妊産婦老人児は別而朝夕心を付大抵冷へたる物かたきもの生なる物等斟酌為致度存候。 右の通同列?評判敝帚之?意書記差上申候、飯粮の儀は民間備荒録に書記候品悉宜敷奉存候、此度書記候品上品には無御座候得共、右備荒録もれ候品、且、先年御当領にて不得止事相用候品聊書記差上申候、以上 天明三年十一月 中條春亮 矢尾板安丈 藁科松玄 仙仁元通 樫村元龍 草刈道格 富澤玄育 藁科立長 平田龍伯 猪俣松英 内村玄登 桑嶋松見 山崎玄益 飯田忠林 |