【3-1-2】堀立川遊水地
堀立川遊水地の植物
堀立川遊水地は地下からの湧水が多く、スポーツ公園にする計画は頓挫した(平成16年春に市として確認)。ここを湿地の まま市民のために残してほしいという市民有志の願いが図らずもかなった形になった。そのためのさまざまな調査や意見具申 などを続けてきた私たちとしてはとても安堵しているところである。
ところで、この遊水地の植生はたいへん不安定で、今のところ年々植物の種類は増大している。2003・4両年度の観察では別表 のように154種を確認できたが、見落としもあるだろうから実際にはもっと多いであろう。 これらの植物を見ると湿地性のものが多いのは当然であるが、中には山地性のものや市街地や原野に生えるもの、したがっ て帰化植物などもかなり混生している。これは遊水地が新しいために新たに進入してくる植物(もちろん他の生物も)がまだ まだ多いことが一つの原因であり、さらに生物と環境との相互作用で環境そのものが毎年変化していることがもう一つの原因 と考えられる。 このように環境とそこにすむ生物が互いに影響しあいながら変化していくことを遷移と呼ぶが、ここの遊水地 の遷移も いずれはある段階で相対的に安定した時期を迎えるはずである。ただし遷移は数十年から数百年、時には数千年かか る現象なので、注意深く観察しないと人間の時間尺度では理解しがたい場合もある。 堀立川遊水地は米沢市では数少ない湿地の代表みたいなものである。他所ではなかなか見られなくなってきた湿地ならでは の野生の花々を楽しむこともできる。それらの中には国や県の絶滅危惧種が4種も含まれている。ここは市民の憩いの場として すばらしい資質を備えているばかりでなく、植物や鳥や昆虫などの観察を通じて、子供たちはもちろん一般市民が身近に自然 の仕組みを学習できる場として最適なビオトープといえるであろう。 ネイチャーフロント米沢では、この地において野鳥観察会同様に植物観察会を年に数回企画し、実施している。関心のある 市民多数の参加を期待している。
[ 8月のヨシ群落 ]
ヨシが密生して大群落をつくっている。その周辺や内部のいたるところに実にさまざまな植物が生育し、鳥や昆虫、その他の小動物に住みかと食べ物を与えている。
[ ヒメガマ ]
普通目にするガマに比して細身で上品な感じがする。草もの盆栽として愛培する人もいるほどである。ガマと区別する要点 は、穂の上部の雄穂と下部の雌穂の間がガマでは密着しているのに対し、ヒメガマでは数cm離れていることである。
[イヌタヌキモの花]
水中の藻のような植物であるが、花を水上に出す食虫植物の一種。国と県の絶滅危惧植物である。
[ コショウハッカ ]
(ヨウロッパ原産、別名セイヨウハッカ)香りが良く、ハーブとして親しまれている。栽培種が逸出し帰化したものであろう。 この遊水地には多い。
[ 7月の植物観察会 ]
あちこち回って沢山の植物を観察し、一休みしているところ。いま白壁さん(左端背中の女性)がコショウハッカの葉を入 れてハーブティーを準備している。雨模様で湿度が高く汗ばんだからだにはとても良い香りで美味しい感動の一杯だった。
[ ミソハギ ]
お盆花の別名のごとく、8月に最も見ごろとなる。水田脇やいたるところに生えているが、遊水地のミソハギは見事である。 少しくらい採ってもなくなる植物ではないので、観察会の折にでも少し手折ってお墓などに供えるのも良いだろう。
[ セリ ]
水際ならどこにでも生えている春の七草の一つであり、春に摘んで食べるのが味や香りを楽しむコツである。しかし夏の花 を咲かせる頃には人々の関心は薄れ、花をしっかり見覚えている人は少ないのではないか。 じつはこの花が咲く少し前のつぼみの頃の花穂や心芽は夏でも食べられるので、試してみてはいかがであろうか。
[ ミクリ と サンカクイ]
ミクリは,国および県の絶滅危惧種である。栗のイガのような実が特徴的で、一度見たら忘れないだろう。しかし米沢市内で これを見たことのある人はかなり少ないのではないか。 写真の右端に見える褐色の卵形の穂を3~4個つけたやや背の高い植物はサンカクイ(茎の断面がほぼ正三角形)である。 |