【4-2-1】馬場谷地湿原

西吾妻登山道・馬場谷地湿原の破壊

98年7月18日(土) 西吾妻登山道現地調査報告
調査者:髙橋敬一・金子 満
【概要】
 登山口から馬場谷地まで、登山道を歩いて調査した。
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(1) 地域指定
 (a) 登山口から馬場谷地まで、磐梯朝日国立公園の特別地域に含まれている。
 (b) 山形側は、矢筈山と馬場谷地との中間ピークまでは、森林生態系保護地域の保全利用地区、同ピークから東に西吾妻側は保存地区に含まれる。
 (c) 福島側は、保全利用地区に含まれる。つまり、矢筈山から東の福島側の登山道は保全利用地区である。

(2) 現況
 (a) 昨年秋から暮れにかけてと思われるが、重機を使用しての「整備」が行われた。
 (b) 馬場谷地には丸太輪切り(直径50cm、長さ60cmくらい)が埋め込まれた。
 (c) 東側の馬場谷地は、従前登山道でなかった湿原中央部に湿原を破壊して埋め込んだ。
 (d)
【登山道の様子の模式図・重機走行道の位置はおおよそ、距離は目測】
複線:従前の登山道、 波線:従前の登山道の隣に樹木伐採して重機走行道あり(Ⅰ)、 
黒太線:従前の登山道から離れて樹木伐採して重機走行道あり(Ⅱ)
  重機走行道は、幅員3mから、ひどい所では10m近くの幅員あり(当該幅員が伐採されている)
  重機走行道がない部分は、従前の登山道が重機走行用に拡幅破壊されている。
(Ⅰ)3カ所40m       9カ所145m         2カ所30m
(Ⅱ) 1カ所15m 5カ所205m

【調査結果】
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(1) 登山口から馬場谷地まで、小型の建設重機(バックホー?)が走行したことが明白。登山道に階段を作ったり、馬場谷地の丸太を埋めるために重機が必要だった?。
(2) そのため、従前、せいぜい1mほどの幅員しかなかった登山道が、「一部を除き」重機の走行幅に拡幅されていた。登山口から150mほどは砕石が敷設され、自然の状態失われていた。

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(3) その「一部」の従前の形状のまま残っている登山道は、樹木など障害物のため重機が走行できなかったところに限られ、そこでは、登山道の外に、樹木を伐採して重機の走行のための「道」が開設されていた。
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(4) 重機走行道には、大部分において伐採された樹木が投げ捨てられており、登山者が歩く道とは異なることが明白だった。あまりにも粗雑な工事である。
(5) 重機走行道は、従前の登山道に接して、その隣に開設されたものと、登山道から離れて開設されたものがあった。

(6) 数ヶ所、登山道が階段となっていたところがあった。従前の登山道で何の問題もなかったのであり、自然の登山道を破壊し、遊歩道のような階段となっていた。その階段も段差が高すぎて、非常に歩きにくく、わざわざバリアーを作ったようなものだった。

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(7) 馬場谷地は、多数の丸太輪切りが湿原内に埋設され、登山道となっていた。
(8) 東側(西吾妻側)の馬場谷地湿原は、従前は、湿原の端を登山道としていたが、湿原の中央に湿原を破壊して丸太が埋設されていた。湿原内にも重機が入ったと思われる。
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(9) 湿原内に、馬場谷地湿原の大きな案内板が建てられていた。その場所の湿原も破壊されていた。

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(10) 当該丸太部分の湿原の回復は不可能で、丸太の耐久性もはなはだ疑問。すでに、丸太が泥に埋まっていたり、泥の中でグラグラするものあった。
(11) 湿原の、西側(白布峠側からの湿原入り口)には、排水溝が設けられており、湿原の水を排水するようになっていた。それでなくとも、馬場谷地湿原は乾燥化の傾向が見られるのに、人工的に乾燥化し、湿原を破壊するものである。