【2-1-2】弥兵衛平湿原弥兵衛平湿原はこんなところ(その2)
弥兵衛平には花や実の可憐さ、美しさで人によく知られている植物も多い。
最近は登山者のマナーが一昔前に比べると格段に良くなっているので、このような国立公園特別保護区域内で植物を盗採する人は滅多にいなくなったが、それでもこの2、30年の間に激減し、レッドデータブックに記載されるようになった種が少なくない。
もちろん、減少の原因が盗採のみとは限らず、増加した登山者による無意識の踏みつけや環境の富栄養化、地球規模の温暖化、乾燥化等々、要因が複雑に絡み合っている。
弥兵衛平でも現在はありふれた植物が何年か後には絶滅危惧種にならないという保証はない。
一般に湿原植物は、湿原そのものが至るところで危機的状況にあるので、それらを注意深く見守り、適切な保全対策を今講じていかなければならない。
左の写真は弥兵衛平湿原で最もありふれた群落で、キンコウカの花を前景にヌマガヤ、ワタスゲ、
ミヤマイヌノハナヒゲなどの草本、ワタミズゴケなどのミズゴケ類が繁茂する。
尾瀬のアヤメ平では、このキンコウカの葉を花のない時季に見た人がアヤメと勘違いし、この地名をつけたと言われている。
場所によってはこのようにミズゴケの上にモウセンゴケ(赤い腺毛の生えた捕虫葉を持つ食虫植物。
コケではないので白い花をつけた花茎ガ出ている。)
やツルコケモモ(ピンクの花をつけた繊細なツツジ科のつる植物)、青緑色の丸い葉のツツジ科低木クロマメノキなど、
多種類の湿原植物を見ることができる。
このヒメシャクナゲもツツジ科の矮低木で、園芸愛好家や業者によって特に狙われることの多かった植物である。
低地の湿地ではミズゴケ採取によって生育環境を奪われて絶滅したところも少なくない。
山形県内では吾妻山以外には現在もう一箇所が自生地として残っているだけである。
弥兵衛平でもめっきり少なくなったので、この写真は弥兵衛平以外のところで見つけて撮影した。
弥兵衛平の裸地化した泥炭表面を緑化するために私たちは現地の植物の種子を採って播いているが、
その採種対象としている主な植物を数種紹介しておく。
ただし現地撮影した植物写真が必ずしも揃っていなかったので、
標本や図鑑などからとった写真もあることをお断りしておく。
実物の大きさも写真とは比例しない。いずれ、オリジナルの写真に取り替える予定である。
これらの植物はいずれも弥兵衛平には普通に見られるもので、踏み付けなどで多少荒れた群落にも多い。 ということは裸地化した泥炭の緑化にも先駆種として使える可能性があると考えられた。 ただし実際に種子を採取して播いてみるとそれぞれ特徴があり、 それらについては「弥兵衛平湿原の植生復元の試み」である程度説明している。 |